
「身体能力」が低下した際の財産管理に役立つ契約
●高齢に伴う「身体機能」と「判断能力」の低下
頭の方はしっかりしているけれど、足が不自由になったり、寝たきりといった「身体機能」の低下により、外出が困難になり、金融機関や役所、医療機関での手続きができないケースも多いと思います。
一方で、身体はしっかりしていても、頭の方の「判断能力」が低下する認知症などによって、生活に支障が出るケースもあります。
このうち「身体機能」の低下に備えて結んでおく契約が財産管理等の委任契約です。
「身体機能」が低下した際の財産管理に備える→財産管理等の委任契約
「判断能力」が低下した際の財産管理備える→任意後見契約・法定後見
身体機能が低下すると何が困る
長期の入院や介護施設の入所のため、金融機関で定期預金や多額の送金をするには原則本人でないと出来ません。
そのため、代理人が手続きする場合は、本人から委任状を作成してもらう必要が出てくるのですが、本人が目や手が不自由だったりすると、その都度作成するのはなかなか大変だと思います。
そこで、いちいち委任状を作成するのではなく、「手続き全般に関して、まとめて誰かにお願いしておく」のが財産管理等の委任契約です。
財産管理等の委任契約書を作成するメリット
●都度委任状を作成しないで「使い回し」ができる 個別に委任状を作成する手間を減らすことができます。これにより代理人が日常の契約や事務手続きをスムーズに行うことが期待できます。(個別に委任状作成を求められるケースも少なからずあります)
●本人の意思表示であることが証明できる
金融機関では、多額の払戻や送金の際に、本人確認を徹底しています。契約書があることにより、本人の意思であることが証明できます。
●親から委任されていることをを他の兄弟に証明できる。
一人の子どもが親の財産管理をしている場合、親の意思で財産管理を委任されていることを客観的に証明できます。
「財産管理」と「療養看護」
財産管理等の委任契約の内容として、「財産管理」と「療養看護」の2つがあります。
「財産管理」とは「本人の財産を、本人の利益になるように、最適な方法で管理すること」です。具体的には
・銀行預金の払戻しや振込
・家賃や光熱費の支払い
・家賃の受取
・保険金の請求
・役所での書類請求や申請等です。
「療養看護」とは医療や看護などの本人の心身を保護するために必要な事務処理全般を指します。具体的には
・病院の入退院や介護施設の入所手続き
・要介護認定の申請
・介護サービスの契約や変更、解約、費用の支払い等です。
受任者は誰にする
大事な財産を委ねるのですから、「本当に信頼できる人」を選ぶことが大事です。
もし身近に適当な相手がいない場合は専門家(弁護士・司法書士・行政書士・社会福祉士など)への依頼も検討しましょう。
報酬について
自由に設定できます。身内の方に委任する場合は無報酬にして、遺言で他の相続人より多めに財産を残してもいいでしょう。専門家に依頼する場合は月額1万~3万円程度にすることが多いようです。
財産管理を委任する上でのリスクを回避するには
●印鑑や通帳を預けっぱなしにしない
いくら信頼できる相手でも通帳や印鑑を預けたままにしておくのは使い込み等のリスクがあります。
トラブルを避けるためにも重要なものは、普段は自分で管理しておいて、必要の都度渡すようにし、用が済んだらすぐに返してもらうようにしましょう。
●委任内容を限定する
「預金から毎月10万円だけ払戻しする」など、委任内容を制限することもできます。
●第三者にチェックしてもらう
利害関係のない親族や専門家に事務処理内容をチェックしてもらうという方法もあります。
●受任者は記録や報告をキチンとしておく
受任者は事務処理内容を本人へ報告する義務があります。後から「お金を使い込んでいる」と誤解を受けないためにも、入出金の記録や領収書はキチンと整理しておきましょう。
財産管理等の委任契約書を作成するには
【財産管理等の委任契約作成の流れ(公正証書で作成する場合)】
公証役場で、具体的な委任内容を決める
↓
公証人に書類作成を依頼する。(必要書類お預け)
↓
原案の契約内容の確認
↓
委任者と受任者が公証役場で、公正証書を作成します。
※通常は財産管理等の委任契約だけでなく、「任意後見契約とセットで契約」する場合が多いです
次回は任意後見契約に関して解説します。
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